地域に根づいた不動産屋さんは、蔵波台の変遷やこれからを誰よりもご存知かも!と思い、蔵波台5丁目にある「美松土地開発株式会社」さんへ。
経営者として、不動産業としての視点から、「蔵波台のこと」だけでなく袖ケ浦市や日本全体に及ぶ話を佐久間 光弘社長にうかがってきました。
美松土地開発株式会社は創業55年
ー御社は創業されてから何年ぐらいですか?
昭和41年からなので、たぶん55年だと思います。
ーお父様が創業者で、佐久間さんが引き継がれて2代目ってことですよね。
そうですそうです。
最初は同業他社に入社して、それからうちの会社ですね。
本当はね、いろんな言葉が喋れれば海外を視野に入れた仕事の方がいいなってずっと思っていました。
ーそうなんですか。
だって、人口減ってるじゃないですか。
これからもっと減ってくるでしょ。
っていうことは、日本全体のマーケットが伸びないっていうか…縮んでいく傾向があるわけだから。
ーいつ頃から日本の人口減の未来を意識し始めましたか?
20年ぐらい前からかな。
全体的に日本はマズくなっていくなと思っていましたよ。
ー不動産の仕事で海外を視野に入れるとすると、海外からの移住者とか別荘需要ですかね。
今、ちょっといろいろ勉強してますね。
蔵波台は賃貸の需要も高いエリア
ー普段、不動産屋さんとの接点って、管理以外だと引っ越してくるまでのところですよね。
そうかもしれないですね。
ー管理だと、事業用と賃貸物件の他に駐車場ですよね。
はい。
ー投資用の物件っていうのはこのエリアだとあまりないのかな…
そうですね、今、投資用の利回り物件はあんまりないですね。
ーなるほど。
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ー賃貸ってこのあたりだと少数派ですよね。
需要はあるので、いい物件があるとすぐ決まりますね。
ー新しい物件って、この辺りでも思いのほか家賃が高かったりしますよね。
そうかもしれないですね。
ー需要のわりに良い物件が少ないのかな。工業地帯に転勤とかで単身赴任で来られる方とかいらっしゃいますもんね。
そうですね。
外からじゃないと見えないこと
ーお休みの日の息抜きってどちらに行かれますか?近場でおすすめとかありますか?
うちは定休日がないので休みっていうのが特にないんですけど、日程が合う時はお客さんとゴルフに行って話したりするのが勉強にもなるし、運動にもなるし良いですかね。
ーゴルフですか、いいご趣味ですね。ゴルフをされるかたは袖ケ浦市に住むのいいですよね。
便利ですよね、近場にゴルフ場が多くて。
ー“お客さん”っていうのはお家買うかたとは違うお客さんですよね。ハウスメーカーさんですか?
ハウスメーカーもいるし、不動産屋もいるし。
ーとはいえ、たまの休みにも仕事の人に会うんですね…。
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ー佐久間社長がインプットする時の情報源ってどんなことですか?
私は調査というか勉強のためにいろんな国に実際に行ってますね。
海外で勉強してないと日本が見えてこないんですよ。
先ほども言いましたが、人口が減っていく日本ではマーケットが縮小していくのは確実なので海外は視野に入れていかないとと思っています。
海外に行くと、より日本が見えてくる。
遅れてるんですよ、日本は。30年間、給料が上がらない国ですよ。
地価も建物のコストも上がってて、でも給料は上がってない。
これで金利上がったらどうするんだろうって思いますよね。
ー国債発行で自分の首しめてるから金利はそうそう上げられないですよね。
消費税も上がらないと国がまわらないでしょうしね。
そう考えると年金とか物価とか、この先の日本はあんまり明るくないですよね。
20年後なんて、相当頑張らないと日本が日本じゃなくなっていきそうですよね。
ーインフラやサービスの維持だって、今の金額では到底無理ですよね。
本当に、そう思う。
20年ぐらい前から消費税25%ぐらいじゃないとやってけないって国は言ってたんですよ。
それを結局先送りしての今ですしね。
袖ケ浦もそうです。
市内で働いて市内に住んでいる人は、袖ケ浦は認知されていると思い込んでいて。
でも、東京の人と話すとアクアラインは知っていても袖ケ浦は知られていない。
袖ケ浦市自体がPRが甘いかなって。
ーたしかに、東京に住んでる時「千葉県出身」って伝えて「千葉のどこ?」って言ってくれる人に「袖ケ浦」って答えてもわかる人はほとんどいなくて。「聞くんじゃなかった…」「言うんじゃなかった…」っていう微妙な空気を浴びていました。笑
そう、袖ケ浦は知られてないんですよね。
ー中にいると見えないもんですよね。
他県に行くとっていうか、県内でも全然知られてないですよね。
だからこそ自分からどんどん外に出ていかないと、見えなくなるので。
将来への危機感もあって海外で勉強しているんです。
蔵波台は変わってない!?
ー佐久間社長はご出身もこのあたりですか?
そうですね。
ー当時、蔵波小学校も蔵波中学校もまだないですよね。
そうですね、長浦小と長浦中しかなくて。
今井に住んでる子とかは僕らより大変そうでしたよね、遠くて。
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ー佐久間社長から見て、子供の頃から現在の蔵波台の変化ってどう感じていらっしゃいますか。
あんまり変わってない気がしませんか?
ーえ!私は、20年くらい地元を離れていて。帰省の度に雑木林が丸坊主になって新築戸建がゴンゴン建っていくので「ずいぶん変わっていくなあ」って感じていました。
なるほどね。
たしかに、そういう意味での変化はあるか。
新築の家が増えたことで、若い世帯が入ってきてくれるという点では良い変化かもね。
でも、平成通りとか全然店はできないし、店が増えて栄えてきたっていう変化は全くないでしょ。
ーたしかに。私が子供の頃、平成通りの開通前はあの道が開通したらお店が立ち並ぶって聞いていた気がします。
そうでしょ?
ー町の今やこれからのことを考えて取り組む人ってどういう人だろうって考えたら、地域で商売している人だと思うんですけど、個人のお店少ないままですよね。行きたいと思えるカフェとかほしいんですけど。
商圏でいうと規模が小さいからお店を出すメリットも小さいんですよね。
平成通りは開通したけど、あのエリアに店が増えてこないと町が変わったって印象にはならないかな。
ーなるほど。
平成通りは“調整”だからダメなんですよ。
ー“調整”?
市街化“調整”区域っていって、スーパーとか出店できないんですよ。
都市計画を進めるために用途地域を市街化区域に変えて、予算をつけて下水道の完備とかきちんとしないと、お店も増えないし人も増えないってことじゃないですか。
スーパーの誘致とか要望はたくさんあったんですけど、袖ケ浦市が本気になって取り組まないとこのあたりに暮らす人が増えても買い物は木更津か市原に人が流れて、地域経済に繋がらないんですよね。
市全体の将来で考えたら絶対メリット大きいのにもったいないと思うんですよね。
長い目で見たら「買い物が便利な地域に引っ越そう」ってことになりかねないし。
ーたしかに。蔵波台のキーポイントは平成通りなんですね。
ヤックスから先、真っ暗なままじゃないですか。
あの道、なんのために作ったんだろうって。
どれくらい本気かってことですよ。
アクアラインの高速バスも長浦駅まで来るバスもほとんど来ないし。
市内の人口の分布で言ったら長浦地域が1番多いのに、全然力入れる気を感じないもんね。
ーそうですね、アクアラインのバスが長浦駅から出るのが1時間に1本くらいになったらもっと便利になります。今は袖ケ浦駅前の開発に力を入れている感じなんですかね。少し前まで田んぼだった風景を知っているから、駅からどんなに近くても買うっていう選択肢には入りませんけど。
最初に道路を作った時に波打ったので説明会を開いたりいろいろ対策はして。今は大丈夫ってことにはなっていますよ。
ー東日本大震災の時に浦安の液状化を見ているので。いくら国とか県とかプロの不動産屋さんに「大丈夫」って言われても、「ならば大丈夫だと思う人が買ったらいい」って思っちゃいます。浦安だって宅地分譲した時は「埋立地だけど大丈夫です」って言って売って、何十年後かの大震災は「想定外でした」で片付けるわけじゃないですか。蔵波台だって隕石降ってくるとか台風で屋根が飛ぶこともあるとは思いますけど、賃貸ならまだしも分譲となれば予見できるリスクは1つでも少ない方が良いって思っちゃって。
そりゃそうだ。
ー地震や水害のボランティアに行って何かあった時は誰も頼れないって知ったので、自分で調べて自分で信じられるか考えます。特に家ともなればすーごい高額ですし。
蔵波台は台地だから地盤はたしかですよ。
ーそうですね、風は強いですけど蔵波台の地盤は信じられます。人気エリアなんですよね。
人口が減ってる中で健闘してますよ。
ー木更津市、袖ケ浦市あたりは、微増とはいえこのご時世に人口が増えるってすごいことだと思っています。
そうですよね。
このエリアに2つも保育園できてるんですよ、この時代に。
すごいことだと思いますよ。
ー遠方から移住されてくる方も多いですか?
最近は川崎、横浜、東京から来られる方も増えていますね。
アクアラインのおかげですね。
千葉市あたりの方が中途半端になってきてるかもしれないですね、アクアラインを使うには遠いし。
ー千葉市よりこっちのほうが土地も安いですもんね。
そうですね、船橋や松戸とか東京寄りはまだまだ強いですし、印西や流山も人気がありますけど。
ー俯瞰して比較すると見えてくる袖ケ浦の魅力っていうのもありますね。
そうですね。
ー人気があるってことは土地の値段も下がりにくいって理解であっていますか?
そういうことだと思いますよ。
人口が減っていく以上、地価の下落は必然ですけど他のエリアより下落が少し鈍くなるという感じだと思います。
ーなるほど。
不動産のプロが選ぶハウスメーカーとは
ーもし佐久間社長が今から家を建てるならここに頼みたい!って思うハウスメーカーさんとか工務店さんってどこですか?
最近は一条工務店さんが人気ですね、着工までに1年待ちとか聞きますね。
ー1年!一条工務店さん、見かける機会が増えましたけど、そんなに人気なんですね。
そうですね、脱衣所もあったかいですからね。
ー脱衣所は家の中で命の危険が高いですもんね。断熱の機能性では、正直一条さんの一択かなと思ってます。
詳しいですね。
ー建てかえの予定はありませんけど。笑 ホームページの仕事で不動産屋さんがクライアントさんだったこともありますし、不動産って奥が深くて面白かったので、都内にいた頃、副業で不動産屋で働いたこともあります。今はオフグリッドのこととあわせて断熱性能の勉強を続けています。
そうなんですね。
気密性では一条かパナソニックですかね。
個人的に造りが頑丈だなって思うのはパナソニックかな、鉄と木の融合だから。
ーそうなんですか。今、家建てて50年はもちますか?
50年かあ、50年はキツいでしょうね。
メンテナンスにもよりますけど床はブカブカになりそうですね。
ー昔の大工さんのお家だと100年とかもってるじゃないですか。
あ、それはもちますね、大地震とかきたらわからないですけど。
ただ、家族構成が変わるので30代で建てて70代で建てかえって感じじゃないですかね。
ー70代で建てかえ…体力要りますね。
どうですか、建てかえ。
今、築年数どれくらいですか?
ーうちは40年超ですね。床がブカブカしているとこあります。笑
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ーウッドショックはどうですか?
まだ下がってないですね。
ー下がることもありますか?
いや、1回上がっちゃうとなかなか下がらないでしょ。
ー2年ぐらい前に建てている人とはコストが全然違いますよね。
2割ぐらいは上がってるんじゃないですかね。
ー住宅の2割は大きいですよね。
そうですよね、恐ろしいですよ。
ー建てどき、難しいですね。
そうですね。
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ー蔵波台でこれから始まることとか、面白いことしてる人とかいませんか?
それが蔵波台の暗いとこでしょ。
ーあら。これだけ人がたくさんいたら面白い人いるんじゃないかなって期待しているんですけど。
これからの蔵波台でいうと、もう開発の予定がそんなにないので新築の戸建てが増えるのもそろそろ限界かなと思います。
ー次に起きてくるのは、内側の空き家問題ですかね。
そうですよね。
蔵波台は、ポツポツ増えてきてる印象です。
壊すのにもお金がかかるし、更地にすると税金が高くなるから放置するんですよね。
ー居住していない場合は、上物がある方が税金を高くしたら活性化しそうですけど。誰も住んでいなくて放置されたらリスクしかないですもんね。新陳代謝も生まれないわけだし。
そうなんですけどね。
ー不動産屋さんとしてはリフォームして中古住宅として売るっていう流れですか?
そうですね、住んでもらうのが1番いいですよね。
ー虫問題とかネズミ問題とか増えてくのヤダな。
そうですよね、防犯的にも良くないですしね。
でも、築40年ぐらいの住宅は駐車スペースが1台かせいぜい2台で今の若い人の需要にマッチしないんですよね。3台か4台ないと。
ーこのエリアは車がないと何もできないですけど4台ってすごいですね。
友達も来ますしね。
ーなるほど。私も友達が車2台で来るって言うから「1台なら入るけど2台無理」って言ったら、「コインパないの?」って聞かれて。1番近くて駅前じゃんって思いました。
たしかに。
ー車なくても楽しく暮らしたいんですけどね。人生に必要なのはスーパーと病院だけじゃないわけで。文化的な娯楽ほしいです。
そうですよね。
ー長浦駅前も商店街って感じじゃないですし、蔵波台にも商店街ないのでお買い物とかお茶飲みに行くのも全部車ですもんね。
長浦駅前もパッとしないですよね、昔から。笑
ー歩いて飲みに行ける美味しいお店、増えてほしいんですけどね。
コロナもあって飲食店は増えないでしょうね。
ファミレスも閉鎖する時代ですからね。
ーたしかに。あとは「本屋がない」は私にとって死活問題です。
袖ケ浦市、1店もないもんね。
ーそうなんですよ。
でも、車さえあれば住むにおいては、このエリアおすすめできるエリアです。
ー駅まで最悪歩けなくないっていうのは強みですよね。
たしかにね。
駅から家に戻ってくる時は上り坂ですけどね。
ーたしかに。笑
美松土地開発株式会社
千葉県袖ケ浦市蔵波台5丁目8−4
0438-62-2858
営業時間:8-19時
https://www.mimatsu-ld.jp/
●楽ちんな下り坂、帰りはきつい上り坂にもなる。どのエリアも良い面とそうでない面が必ずあります。蔵波台は駅から近いほうだし、新しい家と共に若い人も増えているし、いいエリアだと思っていましたが、不動産のプロは私よりずっと高い解像度で町を見ていらっしゃいました。私は、自分がここで育ったからこそ見えていなかったこともあると気付かされました。インタビュー収録:2022/9/28